今回はリーマン予想の第三弾です。今回はゼータ関数を少し脇に置いて素数定理について述べてみたいと思います。この記事はジョン・ダービーシャー著の「素数に憑かれた人たち」を自分なりに理解した内容で記述しています。本書は勘所を分かりやすく説明していて、あたかも自分が数学者になったような気分にさせられる憎い演出が施されています。
さて、前回までの記事は次のリンクでご覧頂けます。
リーマン予想:素数の世界への探訪
リーマン予想:素数の世界への探訪(その2)
リーマンの原論文は「与えられた量よりも小さな素数の個数について」という題名で発表された内容である事に注目したいと思います。つまりこの論文の目的は与えられた引数
を考えた場合、
以下の素数の個数を求める式を考案する事でした。
今この関数(素数個数関数)を
と呼ぶことにしましょう。
は数学では円周率をあらわしますが、ここの
はギリシャ文字でpをあらわし素数(Prime)のpを意味します。したがって円周率そのものとは全く関係がありません。紛らわしいのですが、素数の個数をあらわす関数として慣習的に使われているのでここでもそれを踏襲します。
さてリーマンはこの
を何らかの明示式(Explicit equation)であらわす事を試みました。
を与えて計算をすると
以下の素数の個数が正確に算出される計算式を導き出す事です。その手段としてまずリーマンはゼータ関数
などの考え方を予備段階で導入したのです。
今回はこの素数個数関数について少し考察してみたいと思います。
のイメージをみるために百聞は一見に如かず、
が20位までの関数のグラフを書いてみました。このグラフは数値解析ソフトMaximaで描かれた物で確たる解析論的な数式から計算されたものではありません。しかし正確に
をあらわしています。
第3-1図:素数個数関数(x=20)

ここでは1を素数に勘定していません。
、
、
、
、
という感じですかね。暗算でも確認することができます。それでは引数を200位にするとどうなるかを描いてみました。
第3-2図:素数個数関数(x<200)

グラフがギザギザになっていますが鳥瞰してみるとグラフの傾きが
が大きくなる程小さくなっているようです。さて問題はこの
が大きくなっていった場合、解析的な近似がどのようになるか今回の話です。数学者というのは結構感を働かすことがあるのですが、ガウスなどは上記のグラフを見てグラフ曲線の傾きの逆数
と自然対数の変化が似ているなと予想したのです。その辺の事情を下表のようにまとめました。
第3−1表:素数個数関数の近似

(出典:素数に憑かれた人たち、すこしモディファイしました)
上記の表から素数個数関数
は
が無限大に大きくなると等しくなると仮定しますと、下記の式が導かれます。表の一番右の欄を見てください。ただしこれはあくまで予想です。
}{x/\log x}=1)
これを変形して、下記のような関係がいえるのではないかということになります。これはあのガウスやルジャンドルが提唱したもので素数定理と呼ばれています。両辺を繋ぐ波のような記号は大体等しいという意味になります。
式(3-1)...\sim \frac{x}{\log x})
更に話を進めてもう一つの近似式を求めてみたいと思います。
と名づけてその定義は、
式(3-2)...=\int_{2}^{x}\left ( \frac{1}{\log t} \right )dt)
とします。なぜここで急に積分などがでてくるのか?少々荒っぽいのですが、説明をトライします。上記の式(3-1)をよく眺めると変数
近傍の素数の密度(あるいは素数である確率)は
式(3-3)...
近傍の微小区間
にある素数の個数は
式(3-4)...
と書くことができます。これは
と
の変化の割合は
のほうが相当大きいので
が変化する
区間では
の値はほとんど変わらないであろうという考え方が基にあるからです。さて区間
までの素数の総数は区間
からはじまりますので上記式(3-4)の和を取って下記の式を得ます。
式(3-5)...=\sum_{n=2}^{x}\left ( \frac{1}{\log t }\right )\Delta t)
これを滑らかにすると積分になるので式(3-2)が導かれます。さて、、
Maximaで計算した
式(3-2)の値:
.png)
%i26の計算は%i21と%o21でもとめた
の値を
から引いた計算で答%o26が-753になっているという事を示しています。
この値
を
と比べた結果を下表3-2に示します。
第3-2表:素数個数関数の近似その2

(出典:素数に憑かれた人たち、すこしモディファイしました)
この表を見ると先ほどの
の近似式より
のほうが精度がいいのがわかります。この二種類の近似式と素数個数関数
の関係を下記のようにあらわすことができます。
式(3-5)...\sim \pi (x)\sim \frac{x}{\log x})
これを素数定理(Prime Number Theorem; PNT)と呼びます。これら3組の関数は殆ど等しいという話です。
この3組の関数を
の範囲でグラフにすると下図のようになります。
第3-3図;素数定理の様子

赤のグラフ
、 緑のグラフは
、青のグラフは
です。
リーマンは彼の1865年の論文で、この程度の近似では満足せず、もっと直接
をあらわす式をさがしたのでした。この辺は次回で。
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さて、前回までの記事は次のリンクでご覧頂けます。
リーマン予想:素数の世界への探訪
リーマン予想:素数の世界への探訪(その2)
リーマンの原論文は「与えられた量よりも小さな素数の個数について」という題名で発表された内容である事に注目したいと思います。つまりこの論文の目的は与えられた引数
今この関数(素数個数関数)を
さてリーマンはこの
今回はこの素数個数関数について少し考察してみたいと思います。
第3-1図:素数個数関数(x=20)

ここでは1を素数に勘定していません。
第3-2図:素数個数関数(x<200)

グラフがギザギザになっていますが鳥瞰してみるとグラフの傾きが
第3−1表:素数個数関数の近似

(出典:素数に憑かれた人たち、すこしモディファイしました)

これを変形して、下記のような関係がいえるのではないかということになります。これはあのガウスやルジャンドルが提唱したもので素数定理と呼ばれています。両辺を繋ぐ波のような記号は大体等しいという意味になります。
式(3-1)...
更に話を進めてもう一つの近似式を求めてみたいと思います。
式(3-2)...
とします。なぜここで急に積分などがでてくるのか?少々荒っぽいのですが、説明をトライします。上記の式(3-1)をよく眺めると変数
式(3-3)...
式(3-4)...
と書くことができます。これは
式(3-5)...
これを滑らかにすると積分になるので式(3-2)が導かれます。さて、、
Maximaで計算した
.png)
%i26の計算は%i21と%o21でもとめた
この値
第3-2表:素数個数関数の近似その2

(出典:素数に憑かれた人たち、すこしモディファイしました)
この表を見ると先ほどの
式(3-5)...
これを素数定理(Prime Number Theorem; PNT)と呼びます。これら3組の関数は殆ど等しいという話です。
この3組の関数を
第3-3図;素数定理の様子

赤のグラフ
リーマンは彼の1865年の論文で、この程度の近似では満足せず、もっと直接
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