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松丸本舗閉店前に出会った一冊の本から(シュレディンガーの猫)

松丸本舗が今月末で閉店します。そこで出会った一冊の本から自分の中で派生していく妄想(?)話をここに書き留めたいと思います。

slide02.jpg

松岡正剛さんが企画した丸善丸の内本店内の書店内書店のような松丸本舗が2012年9月30日で閉店することになったようです。理由は大人の事情(そろばん勘定?)によるとの事ですが、今までの本屋の形を超えた知識の空間としてAmazonや電子書籍時代に生の書物の感触を与えたリアル書店の試みがなくなるのは残念です。松丸本舗はこのブログでも一度取り上げましたが(松岡正剛千夜千冊)、昨日様子をちょっと覗いてきました。松丸本舗は一応丸善から独立した本屋なので、ここで購入した本は松丸本舗の包装紙カバーが付けられます。
DSC02298.jpeg  DSC02296_1.jpeg

そこで目にしたのが「シュレディンガーのジレンマと夢」。
シュレーディンガーのジレンマと夢―確率過程と波動力学シュレーディンガーのジレンマと夢―確率過程と波動力学
(2003/05)
長沢 正雄

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シュレディンガーといえばハイゼンベルグと並んで20世紀当初量子力学を体系づけたまさしくその人でありますが、ハイゼンベルグの行列力学に比較してシュレディンガーが提唱したのは物理学者が昔からなじんで来た波動力学の形をしたもの。しかしその波動の振幅は少々厄介で日常の常識から随分違った難解な要素を絡んでいました。ただこの方程式をある初期条件で解きほぐすと素粒子である光子や電子の振る舞いが矛盾なく上手く説明できる事がわかり、実際の現象の理解の最良の方法として物理の世界にとけ込んでいきました。この成果は化学の分野でも大きな成功を残しました。
schroed.gif   Heisenberg_4.jpg
左上:エルヴィーン・ルードルフ・ヨーゼフ・アレクサンダー・シュレーディンガー(Erwin Rudolf Josef Alexander Schrödinger, 1887年8月12日 - 1961年1月4日)、右上:ヴェルナー・カール・ハイゼンベルク(Werner Karl Heisenberg, 1901年12月5日 - 1976年2月1日)

ハイゼンベルグの運動方程式。物理量A(例えば位置、運動量など)は全て行列の形であらわされ、下記の式になります。
 
ここでHはハミルトニアンと呼ばれる演算子でそれぞれの次元にE0、E1、E2なるエネルギーを持つ行列であらわされます。HAとAHを引くと違う値になるという非可逆性も気になる所です。通常の算数や数学ではあまりお目にかかりませんからね。

この方程式は想像するだけでも頭の痛い構造になっていますね。

下記はシュレディンガーが提唱した波動方程式。が波動関数として規定される物。古典力学に出てくる波動方程式によく形が似ています。朝永振一郎先生によればこの構造のおかげで物理学者は随分仕事が捗ったようです。しかしこの波動も複素数であらわされる量で何を意味しているのかはなかなか分かりにくいシロモノです。この波動関数の振幅の2乗は確率振幅と呼ばれています。しかし行列よりはましと言った所でしょうか。



しかしながらここには確率の概念を用いた粒子の状態の重ね合わせなどという我々の日常経験する常識と比較して何ともふわっとしていて分かりずらい内容が含まれている事でした。光子や電子のような目にも見えない小さな粒子を取り扱う学問なのでそのようなモヤモヤを傍らに一応置いておいて、計算を続けると、例えば、電子があるエネルギー領域を超えて一部存在するトンネル効果などという現象がおこる事が見いだされ、実際にこの事象を応用したトンネルダイオードなどの素子も存在したり(江崎玲於奈博士はこれでノーベル賞を獲得しました。)、コンピュータに入っている半導体の電子の挙動などはこの量子力学で説明されて実際にそのように動作していて、決してニュートンが提唱した古典力学では説明できない事を考えればまったく妥当な事なのですが。

この辺の内容は朝永振一郎博士の著書「鏡の中の物理学」に出てくる名作「光子の裁判」で鋭く且つ楽しく説明されています。二つの通り道がある壁を一つの光子が通る場合、観測されている場合とそうでない場合は違った振る舞いをして、観測していない場合はあたかも「この一つの光子が二つの穴を同時に通過したように考えないとつじつまが合わなくなる、つまり光子は波のように振舞うという性質を持った物と考えなくてはならない」と弁護人が傍聴人である朝永先生に書類を押し付けて来たときにふと目覚めるという所で話が終わっています。その弁護士はだれあろうPAMディラックであったというのがオチになっています。この裁判の被告人の名前は「波乃(なみの)光子」と呼ばれています。なかなか上手い名付けですね。光子がミツコと呼ぶかコウシかは読者にまかされているようです。内容について詳しくここで述べる訳には行きませんが光子の性質を良く説明されていました。もっと専門的には有名な教科書「量子力学I」と「量子力学II」に述べられています。
鏡の中の物理学 (講談社学術文庫 31)鏡の中の物理学 (講談社学術文庫 31)
(1976/06/04)
朝永 振一郎

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観測が電子などの量子(あえて粒子とは呼びません)にどのように影響するのか?面白い動画を見つけました。


さて、この解釈の話、一つの事件を起こしました。量子力学の創始者であるシュレディンガーその人がミクロの世界でおこる事象の重ね合わせという事についてとんでもない思考実験を考えだして量子力学の理論的な枠組みが不完全ではないかとケチをつけてしまったのです。この問題は量子力学の観測問題とか哲学の分野でも解釈問題としてしばしば議題に上がることがあります。古典力学では観測が運動に影響するという考え方は無かったのですが、電子のような小さな量子(あえて粒子とは呼びません)を観測するためにはその量子に光を当てる(光子をぶつける)とか何らかの相互作用を伴う作業が必要になり、自然そのままの量子と観測された量子は全然違う挙動を示すのではないか、、という問題が起こります。上記の光子の裁判や動画の内容を観れば分かりますね。量子力学で有名なハイゼンベルグによって導かれる不確定性原理はその式の中にプランク定数と呼ばれる有限な定数が存在するがためにこのような問題が起こると理解されています。プランク定数の大きさは6.626068 × 10-34 m2 kg / sで日常経験する数字に比較して大変小さな数字です。が有限の大きさを持った数字でゼロではありません。



上記の式の意味はx(位置情報)の差とp(運動量情報の差)はプランク定数を4x円周率で割った値より大きいという事です。どちらかが零に近づくとそれに対応した別の情報量が無限大になるように大きくなるので全く分からなくなるという感じでしょうか。位置を微小に知れば知る程量子の運動量は分からなくなります。

このhが0だと運動量も位置もそれぞれ独立に決まりますので古典力学の表現になります。hがたとえばものすごく大きな数字だと我々が住んでいる世界の景色もあたかも超近眼の目で観ているようにぼんやりした物になるかもしれません。右手に左手をかざせば重なり合って見えるとか。。

このプランク定数の大きさの比喩をみるとこのような現象は微視的な世界で起こる事でマクロの世界ではおこらないと思いこみますね。しかしシュレディンガー先生が考えた思考実験は然(さ)にあらず、ミクロの因果関係をマクロの世界に再現してみせたのですね。さあ大変です。してその思考実験とは「シュレディンガーの猫」という物で、下記動画に示す実験の事です。上記の動画で示されたように観測されると振る舞いが変わるという量子の性質を前提に見ると面白いと思います。



かわいそうなシュレディンガーの猫?アルファー線のきまぐれによる生死は何処へ?
20080104085201.jpg

この話を続けていくと観測についての特異な考え方がどんどん発散していきそうです。当面はこれに触れずに量子力学の有効な面のみを利用していくのが現実的な考え方なのでしょう。

番外編:シュレディンガーの哲学する猫、シュレディンガーはその後別の分野にも進んでいきます。
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松丸本舗で見つけた本をもとにいろいろな知識欲が増えてその他の書物や情報を求めていく。まさしくネットサーフィンならぬブックサーフィンを体験できます。それが今月末で閉店になるのは残念ですね。






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