東洋学の研究図書館の東洋文庫が10月20日にミュージアムをオープンさせたので先週訪問してきました。東洋文庫の創始者は三菱財閥の岩崎久彌。普段は研究者に使われている東洋の貴重な書籍などを一般の人にもみじかなものとして親しんでもらう意図でミュージアムは発足したそうです。ここは岩崎文庫モリソン文庫など国宝級の書籍も含めて95万冊の蔵書を持っています。URL →
東洋文庫ホームページこのミュージアムはフラッシュを使わなければほとんどの場所で撮影可能です。日本では珍しいのではないかと思います。イギリスでは大英博物館やナショナルギャラリーなども写真撮影可能ですが。
さてモリソン書庫の書棚の写真。天井まで本がぎっしり収納されていますね。1917年に北京駐在のオーストラリア人モリソン博士から東アジア関する欧文の書籍・絵画・冊子等約2万4千点をまとめて購入したコレクションがここに展示している書棚だそうです。

ミュージアム内の風景の一部。隣接するレストランから覗いたシーボルト庭園。シーボルトゆかりの植物が植えられています。シーボルトは『日本植物誌』で有名ですが、愛妾のお滝さんの名前にちなんで紫陽花の一種の学名にオタクサ(Hydrangea otaksa Siebold et Zuccarini)という名前をつけたというロマンスな逸話が伝わっていますね。 右側の写真はミュージアムからレストランへの回廊です。アジア各国の名言が当地の言語で表されています。

このレストランは小岩井農場が運営しているそうです。岩手の地に明治24年(1891年)開設された農場で共同創始者である小野義眞(日本鉄道会社副社長)、岩崎彌之助(三菱社社長) 、井上勝(鉄道庁長官)の三名の頭文字をとって「小岩井」と命名されたそうです。東洋文庫創設の岩崎久彌は小岩井農場が場主となったそうです。
そのレストラン限定ランチの『マリーアントワネットのお重』右側写真。10食限定だったのですが運良くいただけました。

オリエントホールに展示されている蔵書の一部です。
古代インドの原点とよばれている二つの叙事詩、その一つが下の写真の『ラーマヤーナ』

もう一つの『マハーバラタ』

大英帝国の哲学者にして経済学者のアダムスミスが著した国富論の一部。有名な見えざる手(.. Led by an
Invisible Hnad...)と書かれた部分です。

新井白石のノート。著述をするための下書きとも言うべきメモで、いろいろな事を書き留めていることが分かります。

最後の国宝の間では、マルコポーロの『東方見聞録』のいろいろな版による本が展示されています。その反対側に今回期間限定の展示品があります。現在『史記』の『夏本紀第二』が公開されていました。史記は本紀、世家、表、書、列伝の五部構成になっており、とくに読まれるのは個人の生き様を述べている列伝の部分です。本紀は皇帝の系譜にしたがった皇帝の歴史で今回の展示物は夏皇室の歴史を語っています。三皇本紀、堯舜の時代を含む五帝本紀に次ぐ第3巻目になります。ただし三皇本紀には番号がないので、この夏本紀が第二になります。夏の後は殷本紀、周本紀、秦本紀と続いていきます。

禹(う)は治水や人民の政を特を持って司り皇帝舜の信頼を受け舜の崩御後夏皇帝として任命されていく過程を述べています。近代的な中国史では夏皇室は未だ認知された皇国ではなく伝説の域を出ませんが堯舜の時代を継ぐ時代としての位置付けになっています。
史記については少し思い入れがあります。それはまた別途記事にしたいと思っています。
今回は日常からはなれて遥か昔の歴史で活躍した人々がみじかに感じられる空間で時間を過ごすことができました。